最も安定な反応経路を探索する手法とそのPinner Pyrimidine合成反応への適用に関する論文が公開されました
弊社が、山口大学と共同で進めている、「最も安定な反応経路を探索する手法とそのPinner Pyrimidine合成反応への適用(A method to search the most stable reaction pathway and its application to the Pinner Pyrimidine Synthesis reaction)」に関する論文が公開されました。
機能性化学品の合成経路開発は、これまで有機合成化学者の経験や直感に大きく依存してきました。標的分子の構造が複雑な場合、考えられる合成経路が多数存在し、どの経路を採用すべきかを判断するのは容易ではありません。実験に用いる合成経路の数を減らすために、私たちは「in silicoスクリーニング(計算機によるスクリーニング)」を導入しました。これは合成経路における遷移状態(TS)を探索することを必要とするものであり、私たちは、TSデータベース(TSDB)に含まれるTS構造を用いて、目的反応の新たなTS構造を導出する手法を提案しました。
しかしながら、この手法では、取り得るコンフォメーションの中で最も安定なTS構造が得られることは稀です。すなわち、遷移状態(TS)や反応物、生成物の安定性は、最適化に用いる初期構造に大きく依存します。そのため、この手法では、計算値と実測値を比較する場合にデータが不足する可能性があります。これを解決するためには、最も安定なTSおよび反応に関与する分子を含む反応機構を見つけ出す必要があります。
本論文では、最も安定な反応経路を探索する手法を提案し、それをethyl 3-oxobutanoateと3-ethoxypropanimidamideとのPinner Pyrimidine反応に適用しました。
- Maeyama, E.; Yamaguchi, T.; Sumimoto, M.; Hori, K. A Method to Search the Most Stable Reaction Pathway and Its Application to the Pinner Pyrimidine Synthesis Reaction. J. Comput. Aided Chem. 2021, 22 (0), 1–7. DOI: 10.2751/jcac.22.1
